経済格差が激しいフランス。
移民や外国人労働者ばかりが目立つ地域もあれば、
高級住宅街など良い環境で暮らしている人たちもいます。
隣町がフランス屈指の危険な街なのに、その手前には富裕層が住む街が広がっていたりするので、目に見えないけれども国境のような境界線がクッキリと存在している。そんな場所が多くあります。
貧困層の人たちはその線を超えて住むことはないし、
富裕層の人たちが貧困層が多い区域に足を踏み込むこともありません。
住んでいる人のバックグラウンドや人種が極端に異なるので、別世界に住んでいる者同士といった感じで、同じ地域に住んでいても交じり合う事は限りなくゼロ。
ただ貧困層の地域に住んでいる家庭でも、富裕層に交じって貧困状態にある家庭でも、親の経済状況や教育意識の差が、子供たちの学校生活に大きな影響を与えています。
今回は、経済格差・教育格差を撲滅するべくフランス政府の取り組み。
給食編として学校朝食無料&学校給食費1ユーロについて、
そして日本とは異なるフランスの給食制度について紹介したいと思います。
フランスの給食制度について
腹が減っては何もやる気が起こりません。
給食で何を食べれるのか?
メニューがいまいちだとテンションがだだ下がりになります。
子供にとっての給食献立とは学校生活のモチベを決める重要な秘訣なんだと思いますが、
グルメ国フランスの学校給食はどうなっているのか?
まずはフランスの給食制度について日本と違うところを見てみましょう。
昼食は給食にするか自宅で食べるか選べる
フランスの昼休み時間は2時間とめちゃくちゃ長いのですが、次のように昼食をどこで食べるのか選べます。
- 学校に残って給食
- 自宅に戻って昼食
子供が幼稚園・小学校に通っている場合、必ず親の送り迎えが必須になるし、送り迎えの時間が決まっているので、ご飯は学校で食べてこい!と思っている親がほとんどです。
実際フランスは共働きがほとんどなので9割くらいの子供は学校でご飯を食べていますが、
デリケートな子だったり、給食嫌いな子の親は、ジジババが子供を迎えに行きます。
子供が年少さんであれば昼食のタイミングで子供を迎えに行き自宅で昼寝させたり、
疲れやすい子供は一旦家に帰って休む事ができるなどのメリットもあります。
給食は予約制、ペナルティが加算される場合もある
フランスの給食は予約制です。
月曜日と火曜日は学校で昼食を食べて、木曜日と金曜日だけ自宅で食べるとか、
「今週は学校で給食だけども、来週はママ仕事休みだから一緒に昼ごはん食べようね!」
とか、給食をランダムに使い分ける事ができます。
私の住んでいる地域だと、前日の夜0時前までにネットで予約をすれば次の日の給食が確保できます。
もちろん一年一括予約、週予約、曜日予約などいろんな予約方法があり、予定がある日だけ予約したり、イレギュラーにキャンセルするのも自由自在です。
学年末までの予約がネット上で簡単に行えます。
朝や夕方の学童保育、バカンス時の学童保育、宿題の手助けなど充実したサービスも同じ画面から予約ができるので便利なんですが、
もし予約をしていなかったのに給食などを利用した場合、急な予定変更は通常料金にペナルティが加算されます。
うっかり先月の支払いを忘れていた…
催促の通知が来た後も支払いができなかった…
こういった場合もペナルティで料金が割り増しで請求されます。
メニューの幅が広く配慮されている
フランスの給食献立の幅は広いです。
地域にもよりますが、毎週木曜日がお楽しみメニューだったり、食の世界一周を目指した各国料理が出てきたり、季節の行事に関連した献立が考えられたり、シェフのおすすめ料理が出てきたりします。
私の住んでいる地域では何年か前にメニューが一新して、
(前菜) +メイン+デザートもしくはチーズのように
前菜はあったりなかったり、食後のデザートもしくはチーズだったり、以前のようなフルコースではなくなりました。そして献立の内容も子供の好みに合わせたメニューが増えたりと、給食内容は時代とともに変化をしています。
豚肉をメニューから外している
フランスの学校には色んな国のルーツを持つ子供達が通っています。
イスラム圏出身(モロッコ・アルジェリア・その他アフリカの国など ) の両親を持つ子供たちも沢山いるのですが、
宗教上の理由で豚肉が食べれません。
学校給食に豚肉を出してしまうと結構な割合で食べれない子供が続出してしまうので、地域によっては豚肉を排除したメニューが提供されています。
ベジタリアンメニューが週一で義務
大体週に1回くらいの割合でベジタリアンメニューがでてきます。
▼ニューヨークでも毎週月曜日はベジタリアンの日
毎週月曜日は肉無しの給食に in ニューヨーク https://t.co/9GlUZ0mxXf
— mousouadvisor (@mousouadvisor) April 23, 2019
フランスのように給食にベジタリアンメニュー・ヴィーガンメニューを義務化・推奨する国は、これから増えると思います。
アレルギー持ちの子供に十分配慮したシステムになっている
フランスでは子供のアレルギーを理由に公立学校の給食の利用を拒否することができません。
可能な限り子供たちの状態に合わせた配慮をしてくれます。
PAI( Projet d’accueil individualisé )という個別プロジェクトを依頼することによって、食物アレルギーの対応を求める事ができます。
- 子供がどういったアレルギーを持っているのか?
- どの食べ物でアレルギーが反応してしまうのか?
- アレルギーの症状
- アレルギー時の対応(薬の服用も含めて)
主治医・学校医・施設の責任者・両親で情報を共有することで、より安全な食の管理に努める事が可能です。
アレルギー持ちの子供がついつい対象の物を食べてしまいそうで大変心配なのですが、学校側・食堂でお世話を担当するスタッフにしっかりと管理してもらう事ができるので親としても安心です。
また例えば、グルテンでアレルギー反応を起こす場合、
グルテンフリーのパンやパスタを持参してもよいし、
卵が使われてたメイン料理が献立で予定されている場合なども、
自分でお弁当を持参することができます。
地場産のものを食べる
2020年2月現在、子供が通っている学校の給食では全体の25%の食材が地場産のもので、そのほとんどの食材が有機農法で育った野菜・乳製品・肉で提供されています。
公立学校で提供される給食やおやつの材料は、地元の物を食するローカルフードの推進が努められている最中なんですが、2022年の1月からその割合が50%までに引き上げられる予定です。
給食費が一律でないフランス。親の所得に応じて値段が違う
日本の場合、住んでいる場所の自治体によって給食費の徴収額がちがいますよね。
フランスもそうなのですが、
住んでいる地域によって、さらに世帯所得によって給食費用が変わってきます。
ちなみに私が住んでいるところは4段階の設定がありますが
- 一番安い給食費は1.26ユーロ/1食
- 一番高い給食費は3.17ユーロ/1食
子育て支援が充実している街に住んでいるので、3.17ユーロが上限額で打ち切りになります。 その他の街と比べても破格的に安い給食費です。
※フランスの学校や保育施設などでは、収入や家族構成などを考慮して決められる課税額決定の指数「家族指数(Quotient familial)」で割り出された額を基準に給食費・学童費・保育費などが決定するものと、各自治体の独自の計算方法で割り出させるパターンがあります。
経済格差マックスのパリ。給食費の設定は10段階ある
ちなみにパリの場合。
ブルジョアもいれば移民もいる大きな都市です。
子持ち世帯がパリに住むならば、額面で最低8000ユーロ/月(約96万円)ほどの収入がなければ住むのが厳しいと言われていますが、最低賃金以下の収入でパリに住んでいる世帯もいます。
なぜ収入が低い人がパリに住めるかというと、一般人には到底買えないような高級住宅区であったとしても、低所得者専用(もしくは公務員優先)の公営住宅「HLM」を各区で確保しなければいけないからです。
なので収入が十分でない人でも市が管理する賃貸物件を借りる事ができるので、同じ学校に通う子供の親の経済格差は天と地ほどの差が開いているのがパリです。
そんな経済格差の激しいパリの給食費用は10段階です!
- 一番安い給食費は0.13ユーロ/1食
- 一番高い給食費は7ユーロ/1食
一番安い給食費だと 0.13ユーロ ×16日(水曜は学校がないので除く)= 2.08ユーロ (約250円!)
所得がゼロに近い家庭などがこの費用設定になりますが、その場合の一か月の給食費は約250円です!
一食当たりの給食費が 0.13ユーロなんてどこの街を探してもないです。さすがパリですね充実してます。
ちなみにベルサイユ宮殿があるブルジョアの街、ベルサイユの給食費
最低額は2.8ユーロ/1食 、最高額は6.35ユーロ/1食 で全体的に高めの設定になっています。 (ベルサイユの給食費は2016年のもの)
学校朝食を無料で提供
日本とは給食制度がかなり違うフランスですが、
給食・午後の学童で提供される「おやつ」の他にも、
学校で朝食をサービスするかどうか検討されています。
ただすべての学校で朝食を食べれるわけでなく、
現在のところ優先教育政策の対象となっている学校に通う子供たちが受けれる支援となっています。
優先教育政策(La politique d’éducation prioritaire )とは?
優先教育政策とは、 社会的背景によって子供の教育レベルに格差が出ないように取り組んでいる教育政策の事です。
社会的もしくは経済的不平等が子供の教育格差に大きな影響を及ぼしていること。それによって児童が住んでいる地域の学校によって大きな教育ギャップが出ている事が背景にあります。
フランスでは現在、小学校で約6000校・中学校で約1000校の学校が優先教育対象の学校として指定されていますが、
- 中学一年生時(6ème)以前に落第をしている生徒の割合が多い学校
- 貧困地域に学校がある
- 環境の悪いアパート群に住んでいる児童が多く通っている学校
上は政策の対象となる学校の特徴(一部)ですが、こういった学校の教育の質を平均的な学校の水準までに上げ、そこで学ぶ生徒たちのより良い未来に繋げていくことが目的です。
13%の児童は朝食無し。空腹で学校に登校する
そして大きな課題がもう一つ。
優先教育区の学校に通う児童の10人に1人以上(13%)は、朝食を取らず空腹で学校に通っている事も指摘されています。
幼少期からの経済格差による不平等を少しでも軽減できるようにする事。
空腹と戦うことなく良いコンディションで学習に集中できるようにする事。
そういった目的で、朝食の支援をする事も優先教育政策の課題になりました。
8つの教育区で学校朝食無料がスタート、今後も拡大中
2019年4月23日よりフランスでは学校朝食無料がスタートしました。
貧困で朝食が食べれない…
こういった環境で生活する児童(幼稚園生・小学生)が対象です。
この試みは8つの教育区 (アミアン、レユニオン、リール、モンペリエ、ナント、ランス、トゥールーズ、ヴェルサイユ) から開始。
どの教育区も管轄している地域が広いのですが、その中でも貧困地域にある学校に通う子供11000人が朝食無料のテスト支援を受ける事ができました。
そして2020年にはこの教育区以外にも対象範囲を広げて、約20000人の子供たちがバランスの取れた朝食を頂けるようになります。
2020年以降も学校朝食のサービスを必要としている児童全員に広がるように計画を進めていきたい方針ですが、
この取り組みは一日の始まりに朝食をとる重要性が分かっていない親の意識を変える対策でもあります。
学校給食費は1ユーロ!
子供の学校給食は1ユーロに!
こちらの対策は、貧困・困難地域に住む子供、そして農村地域に住む子供も対象です。
給食費を支払えない家庭は、仕事のあいまに子供を探しに行かなければいけないし、子供の社会性を伸ばす為には、お友達と一緒にご飯を食べる重要性もあり、各家庭の状況に合わせた適正な価格の設定が必要になります。
政府の【学校給食1ユーロ】対策の対象となる自治体は10000ほど、2020年には4万人の児童が対象となっています。
都市部の貧困・困難地域の問題
貧困な地域に住んでいる子供たちは給食で栄養バランスを補っている場合も多く、給食は必要な存在ですが、住んでいる自治体によっては給食費の設定が高すぎる場合があります。
例えばベルサイユの教育区はイブリン県全体を管轄してますが、イブリン県には262の自治体があり各自治体で給食費が異なります。
裕福な地域でもなく貧困層も沢山住んでいる自治体なのに、給食費が最低1食4ユーロ(約480円)以上のところもいくつか存在しています。
最低の金額設定が高すぎると、子供の多い世帯や、平均収入を下回っている世帯、一人親世帯など、子供の給食費がかなり負担になるケースが相次ぎ自治体へ相談するケースが増えています。
農村地域に住んでいる子供の給食費がバカ高い
そしてこれは都市部の貧困層だけの問題ではありません。
一部農村地域に住んでいる子供を持つ世帯も同様です。
農村地域の場合、一食当たりのコストがどうしても高くなるので各家庭の負担が増えるのです。
農村地域の給食費は非常に高く平均で4.5 ユーロ(約540円)!
家計とのバランスが崩れた金額の設定になっています。
特に地方の農村地域では適正な価格で給食を提供できない自治体が多く【学校給食1ユーロ】の必要性は都市部の貧困層よりも深刻です。