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ハーフのバイリンガル教育、父と母の母国語それぞれの言葉を自然と覚えていく事が出来ればそれは理想なのですが、
現実はそうも甘くはありません。
今回は「バイリンガル教育でやっていはいけない事と失敗例」について紹介します。
ハーフの我が子「どっちつかず」になるのでは?という恐怖
親が母国語を話すメリット。
発音はもちろん言葉の表現も自然なので、生きた言葉をスムーズに獲得していく事が出来るのですが、
子供の言葉の遅れが目立つ…
と悩んでいる人も多いんではないんでしょうか?
「言葉の遅れ」「どっちつかず」「ダブルリミテッド」など、バイリンガル教育のデメリット面を表す言葉は沢山あって、
「もしかしてバイリンガル教育を辞めた方がいいのかも…」と感じてる人もいるかもしれません。
ですが、お子さんが会話の内容をしっかりと理解できていれば、後は自然と口から言葉が溢れてくるので、多言語環境だとしても焦る必要もないし、バイリンガル教育を辞める必要はないんです。
(※現地語が遅れていて学校の勉強につまづいたり、お友達との会話が困難になるケースであれば現地語のサポートは必須で家庭での取り組みも必要になってきます。)
年長さんくらいまでは言葉の切り替えが出来ずに一瞬「うーっ」と固まる場面もありますが、多言語環境で育っている子供にはよくるある事なので心配はご無用。
どちらか(もしくは両方)の親の母国語と現地語の両方で育っているので、学校のお友達と比べると言葉が遅れていると不安な気持ちも出てきますが、
母国語が理解できている子であれば第二言語を学ぶ力は十分に備わっているし、
自宅での会話が日本語であったとしても、大きくなるにつれて現地語がどんどん強くなっていきます。
なので日本語を話すことで言葉の発達はブロックしません。
だってバイリンガルの子だけでなく、モノリンガル(1言語)の子も話し始めが遅い子はいますよね。
いくつかの国を転々としなければ、最低でも育った国の言葉はネイティブになるので【どっちつかず】になるかも…
と焦る必要もありません。
ただ、
この辺が定まっていないと日本語教育や第二言語習得を続けていくには曖昧になりすぎて、子供も両親のバイリンガル教育に疑問を持つ可能性もあります。
バイリンガル教育でやっていはいけない事「6大失敗例」
ここではバイリンガル教育でやっていはいけない失敗例を紹介してみます。
親の熱意が空回りして逆効果になりやすいパターンです。
どれも避けたいやり方なので、もし心当たりがあれば即座に辞めてみた方がいいかもです。
2つの言語を混ぜて話す
バイリンガル教育で一番やってはいけない事。
それは【2つの言語を混ぜて話す】ことです。
もし子供が赤ちゃんの頃から2つの言語を混ぜた文章で話していれば、
8割くらいの単語は日本語で理解できるけど、残りの2割の単語は英語でしか理解できない…
こんな困った現象が出始めてきます。
2~3語文を話始めるときに文が成立しなくなり、預かり保育とか祖父母の家にいった時、誰からも話している内容を理解してもらえない状況が出来上がってしまうからです。
ルー大島さんの「ルー語変換」で出てきた文章がまさしくそれで、
「机の上からタオル持ってきて」と言わなければいけない所を
「デスクのトップからタオル持ってきてw」
意外と言っていそうな変換例が出てきて驚きましたが、実際にこんな感じで話している人もいます。
日本語の文章の中に英語の単語が存在してしまうと「デスク」「トップ」という言葉が日本語だと認知してしまい、「机」「上」といった正しい日本語を知ることができません。
上の場合はまだ英語なので理解できる人もいますが、
私がフランスでお見かけしたお母さんは、
「テーブルの上の serviette(タオル)持ってきて」
と言っていました。
日本に住んでいる方で一体どれくらいの人がserviette=タオルと気づくのでしょうか…
これだと、日本語とフランス語を両方熟知した人にしか解ってもらえない文章になってしまいますよね…
子供に一旦覚えさせた言葉を後から訂正させると再認識するまでかなりの時間がかかります。
子供の混乱を避けるためにも「2つの言語を混ぜて使わない」これはとても大事なことなのです。
2つの言語を一つの文章に混ぜて使うのはご法度ですが、
平日は日本語で週末は英語など曜日で使い分けて話していく事は可能です。曜日で使い分けるとどの言語をつかっているか認知しやすくなります。
誰がどの言語を話すか一貫性がない
国際結婚カップルで多いのが「誰がどの言語を話すか決まっていない」事も失敗例の一つとして指摘されます。
例えば文章は綺麗な日本語だけど、たまに英語で話しかけてみたりと、話し手に言語の一貫性がないことです。
一貫性が無いと子供も理解するまでに困惑してしまします。
お母さん⇒日本語
お父さん⇒英語
このように話し手の言語を確立すると、
両親がどの言語を使っているのか子供に知らせる事が出来るので呑み込む力も早くなります。
家の場合は宿題を見る時だけはフランス語でその他は日本語です。
主人の帰りが遅いので宿題を見る人が私しかいないので渋々ですが、
ママは宿題の時だけフランス語を話す。
このように誰がどの言語を話すのか?
こういった明確なルールが家庭内にあると母親や父親の母国語の獲得スピードが速くなります。
一つの言語に絞れない。不安でブレる
このままだと子供が日本語話してくれないかも…
(現地語が)周りの子供と比べると遅れている…
こういった2つの悩みが同時にある場合、自分がやっていることが本当に良いのか不安になる事はもちろんあります。
現地語だけで会話していても「このままだと日本語話せない」という不安が出てきたり、
家庭では日本語だけで会話しているので、周りのお友達と上手に会話が出来なくて馴染めていない子供の姿を見た時など…
どちらの言語も教えなければという焦りでブレてしまい、中途半端に両方の言語を話している場合です。
特に乳幼児期にワンオペ状態で海外在住・現地語が得意ではない方が、日中子供の面倒を見ている場合、母国語にブレが生じてしまうと、そのまま子供の言葉の発達にも影響するので、この場合も話す言語は一つに絞って日本語を続けていった方が良いです。
覚え間違い・言い間違いをしつこく訂正させている
言葉を教える時に大事な事。
それは言い間違い・覚え間違いがあったり発音が正しくなくても、しつこく訂正させないでください。
何度も何度もできるまで繰り返させたり怒ったりすると逆効果になって、人前で話すことが苦手になります。
それをやられてしまうと大人でも心が折れるし自信が無くなりますよね。
年齢や子供によっては概念が出来上がってない場合もあるし、発音できない音もあります。なのでそこはよく理解してください。
発音は7割くらいできていれば良しとして先に進みましょう。
発音・覚え間違い・言い間違いの良い訂正例
例えば子供が朝起きた時、
「おはよう~、夜ご飯食べたい~」
と「朝ご飯」を「夜ご飯」と言ってしまった場合、
「朝ご飯でしょ!」と指摘
「おはよ~、朝ごはん食べようね~」と直後に言葉を添える
こんな感じで子供が間違った後は誤りを強調するのではなく、正しい文章を添えるだけも頭にスーッと入ってきます。
間違いは見逃さないけど、正しい単語や文章を「自然」に「直後」に「一度だけ」優しくオウム返しする感じが効果的です。
私はフランスにすんでいるので、フランス人の言語聴覚士の先生数人とお話する機会がありますが、
必ずこれは実践されています。
例えはフランス語の場合、
J’ai pris une bain.(お風呂に入った)
と言ってしまったら全文を言い直すのではなく、間違えた冠詞と名詞をセットにして
「un bain」
と直後に言い添えてます。
子供だけでなく大人にも有効な方法なので、是非試してみてください。
無理強いしすぎ。子供が拒否っているのが見えていない
特に海外在住のハーフちゃんの日本語教育によくある話。
子供の日本語力を上げたいと思い日本語学校に通わせているけれど子供が行きたがらないケースが結構あります。
親のモチベーションとは裏腹に子供が拒否っている。
そんな家庭も実際多いです。
もう既に子供のアイデンティティが育ってしまっている場合、
「私は○○人だから日本語は必要ない!」
と激しく日本語教育を拒否することがあります。
子供が低学年以上の年齢になると、日本語学校に行く行かないでもめる家庭も増えてきます。
一度、フランスに住む仲の良いお母さんから「子供を日本人学校に入れたい」「日本語を教えたい」と聞いていたので、「日本の幼児雑誌」をパリのジュンク堂で見つけプレゼントした事があります。
当時、ママ友の子供は年長さんくらいだったと記憶してますが、
その「日本の幼児雑誌」を見るなり、
「ノーン!」
とプレゼントの受け取りを拒否し絶対に手に取りませんでした。
子供が抵抗している事が直ぐに分かりましたが、お母さんはそれでも「日本語学校に通わせたい」それで意見が衝突していたのです。
聞いた話、自宅から1時間半のとこにある日本語教室に行かせる予定なので、土曜日の予定はほぼ潰れてしまう事。
学校は土曜日なので、今やっている習い事「ダンス教室」は辞めてもらわなければいけないと語っていました。
本人は「ダンスを辞めたくない!」
「日本語学校に行きたくない!」
と一貫して伝えているのに、お母さんが全く聞いていない場面に遭遇したのです。
母親のエゴやな…
と当時は思ってましたが、意外と似たような家庭多いです。
海外在住のハーフだけでなく、日本に住んでいるお子さんの第二言語教育にでも同じことが言えますが、苦手意識を与えてしまうと渋々やっているだけで身についていない事もあります。
しかも本人が大好きな習い事を辞めさせてまで学校に行かせると、
教えたい言葉=苦手
こんな固定観念ができて本人のモチベーションがゼロになってしまいます。
例えば、スポーツ好きな子であれば、日本人のお子さんが集まっているスポーツクラブに通わせるとか、
一日15分一緒に卓上ゲームをやるだけでも子供の語彙力や会話力はぐんぐん伸びていくので、補習校に執着するよりも、子供が興味を持ってもらえる他の方法で続けていくしかないです。
「母国語」や「物の概念」が確立する前に第二言語を習得させようとする
第二言語獲得の早期教育。
賛否両論ありますが、第二言語を習得する時期が早すぎる場合もあります。
日本には「0歳代」から入会可能な英語クラスなどもありますが、
バイリンガル教育焦らなくてもいいです。
色や形の概念が無い時に一生懸命「レッド」「ブルー」と言われても
「??」となるだけです。
早期教育を始める前に母国語の土台作りが重要です。基礎がないと第二言語は伸びないし母国語以上のレベルを求める事が出来ないからです。
ハーフの日本語教育で抱える悩み
子供が小さいうちはお家で見てくれる親の言葉が強くでますが、学校に通い始めると徐々に現地の言葉が強くなります。
例えばお母さんが【日本語】で話しかけても、子供の返事は【英語】で返ってくるとか、日本語は理解できるけど話せないとか。
年齢が上がるにつれてだんだんと話す機会が無くなるのです。
小学校に上がれば現地の言葉を勉強し、読み書きも繰り返し勉強していきます。現地のお友達と過ごす時間も多くなり、外での会話で日本語は出てきません。
海外に住んでいると家庭の中でしか日本語を使っていないので、外で日本語に触れる機会が全くないのです。
なのでひらがなやカタカタの書き方をマスターしようとしても、毎日日本語に触れていないので覚えるスピードも遅く。
だんだんと現地校の宿題に押されていき両立が難しくなっていき…
こんなにバイリンガル教育が難しいとは思わなかった。
小さいころから日本語で話しかければスラスラと話せるようになるなんて大間違いで、
実際は親と子供の相当な努力と本人の語学センス。そして興味をもって続けていく事で【成功】するのです。
家の場合、日本語を話してと子供からのリクエストもあるので家庭内の会話は日本語で行いますが、家庭内で話す単語数はたかが知れているので、語彙力を上げる練習をしなければ、日本人の同年代の子供たちと対等に話すことは難しいかなと思っています。
ハーフだけどモノリンガル、
日本人の子だけど日本語が話せない。
もし何かがあって日本に帰らなければいけなくなったら…
日本の学校に適応してくれるのだろうか…
とかグルグルと頭の中で考えててしまって焦る方も多いのです。
日本語教育・外国語の習得の勉強は一生続く
将来日本に戻って日本の学校を受験するなど明確な目的が無い限りは、
子供が小さいころに無理をさせて日本語嫌いになったり、途中で日本語教育をやめるよりも、
一緒に日本の映画を見たり漫画を見たり、旅行に行って楽しんだり、まずは日本に興味をもってもらう事を大事にした方がいいです。
そうすると子供の中で日本語を習ってみたいという情熱が湧いてきて、将来的に日本語を勉強する方も多くいます。
パリにINALCO( Institut national des langues et civilisations orientales)大学といって、西ヨーロッパ以外の言語や文化を学ぶ国立の大学がありますが、もちろん日本語の学部もあります。
そこで最終的に日本人の様にうまく話せるようになる人は、日仏ハーフ・生粋フランス人関係なく、日本文化や日本への情熱がある人ばかりです。
大学に通った後、日本へ留学・短期留学したり、仕事をしたりしながらも日本語を勉強し続けていて通訳者になったり、日本の企業で働く人も多いので、
本人の情熱があれば何歳からでも日本語は勉強することができます。
バイリンガル教育というと子供が小さい時に力を入れがちですが、
日本語に限らず外国語の習得は一生勉強するものです。
なので長い目でみると、子供が嫌がっているのを無理に続けさせると逆効果になります。
まずは興味あるものから楽しく始める。
日本=大好き
と思ってもらう事が一番大事です。
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