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観光中に、かわいい子犬がずぶ濡れになって道端にポツンと座っていたらどうしますか?
大通りに面していれば車も頻繁に通るので、安全な場所に避難させてくれる優しい方もいるかもしれません。
でも…
その行為は大変危険です。
今日は動物好きさんに注意して欲しい「狂犬病」について、そして狂犬病の恐ろしさについてお知らせします。
意外と知らない狂犬病の恐ろしさ
日本で狂犬病が発生したのは、1957年のネコが最後。
その年以降、国内から狂犬病を発症した動物は見つかっていません。
島国ジャポンは、狂犬病の撲滅に成功した数少ない国なので、
狂犬病がどんだけ恐ろしいウィルスなのか?
狂犬病は何となく知っているけれど、発症してしまうとどんな症状になってしまうのか?
詳しく知らない人もいるかと思います。
狂犬病が発生するリスクはどこにでも
でも狂犬病のリスクはどこにでもあるんです。
大半の国は陸でつながっているので、狂犬病を撲滅したとしても他国から感染した犬がやってきたり、キツネやコウモリを介して発症してしまうケースが起こります。
ほぼ島国の先進国以外 (以下の地図、ブルーの箇所は狂犬病の撲滅地域)がオレンジ色。
陸続きの地域は、感染症が広がりやすい事が一目でわかる地図です。
上の地図は2004年のものですが、オレンジ色の斜線地域は、頻繁に狂犬病が発生している地域。
狂犬病の発生リスクが一番大きい国はインド(7437人)、エチオピア(4169人)、そして中国(2635人)です。
南極大陸を除くほぼすべての地域に発生可能な狂犬病ですが、一番多い地域はアジアとアフリカ。
狂犬病の症例の95%が、この2大大陸で起きています。
狂犬病は犬だけが原因でない
狂犬病って、よだれを垂らしながら威嚇してきたり、異常行動を繰り返す犬が持っているイメージがありませんか?
私もそう思っていた一人だったんですが、
地域によって、媒介動物が違っているのが分かります。
アジアはほぼ犬!
ヨーロッパは、キツネやコウモリ。
南米はマングース。
アフリカではジャッカルも。
中東ではオオカミも。
北米はコヨーテ、アライグマやスカンクもなんですね。
どれも怖くて触れませんが、
こうやってみると犬からの媒介が多い国、圧倒的に感染者が多いです。
唯一触れるのが犬だからなんでしょうか?
全世界で、狂犬病が原因で死亡した人は2004年に55,000人、現在では59,000人です。
感染媒介した99%の動物は犬ですが、
南米アメリカの場合、犬ではなくコウモリが原因となる事がほとんどです。
ツメで引っかかれるだけでも狂犬病に感染する
哺乳動物が狂犬病ウィルスを持っている可能性がある事はすでにお伝えしたんですが、
可愛い子犬もウィルスを持っているの?と思ったことがありませんか?
実は成犬だけでなく、子犬もウィルスを持っています。
子犬なんて可愛い盛りで、異常行動があるとか気づかず、ついつい一緒に遊んだりしてしまう人もいると思うんです。
現に2019年5月10日、ノルウェーの女性がバカンス先のフィリピンで子犬と戯れてただけで感染し、帰国後亡くなってしまったニュースが報道されました。
一緒にいた知人によれば、ホントに普通の子犬らしく、女性の指を口にはさんで遊んでいたそう。
がっつりと噛まれなくとも、ちょっとした甘噛みや舐められるだけでも感染…
よくよく調べてみるとツメで引っかかれるだけでも感染の可能性があるのだとか…
ウイルスは感染動物の唾液に含まれます。哺乳動物に咬まれたり、傷口、目や口の粘膜をなめられたりすることで神経系の細胞に感染します。動物は前足をなめるので、ウイルスの付いたツメで引っかかれても感染する可能性があります
厚生労働省検疫所のサイト 、感染経路より
狂犬病を発症すると100%の致死率が待っている
そして狂犬病の何が怖いかというと致死率です。
噛まれたらすぐに病院に行ってワクチンを接種しなければいけませんが、
もし狂犬病を発症してしまったら、
治療法はないんです。
ワクチンを受けていなければ、ほぼ100%の確率で亡くなってしまう事。
感染者のほとんどは、亡くなってしまうんです。
動物の唾液に含まれたウィルスが体内に侵入すると、1~3か月(最高で1年もあるのだとか)の潜伏期があるのだそう。
もしその後、狂犬病が発症すれば有効な治療法は確立されていません。
以前アフリカでパンデミックを起こした感染力の強い「エボラ出血熱」。
エボラウィルスに感染して発症した場合、もっとも致死率の高いザイール型で90%、低いもので20%なので、この狂犬病ウィルスの100%という数字はものすごく驚異的です。
狂犬病の恐ろしい症状
初期症状は、発熱・頭痛・倦怠感・疲労感・のどの痛みなど、風邪に似た症状で始まります。
狂犬病の恐ろしい症状は、その後2パターンに分かれます。
激怒型(攻撃・興奮・多動など)
ウィルスは脳神経に到達する為、脳炎症状が表れます。
一つは激怒型といわれる不安・多動・興奮などの症状を伴ったり、精神錯覚を起こしたり幻覚を見たり、理性を失い攻撃性が出てくること。
そしてこの症状の大きな特徴に、恐水症(極端に水を恐れる)、恐風症(風邪に敏感に反応し恐怖する)が表れる事。
極端に水を恐れるようになってしまって、水を飲むことが出来ない状態に陥いったり、風に敏感に反応し理性を失う症状が表れ、最終的に昏睡状態になり心肺が停止してしまいます。
死に至るまで、ほんの数日です。
麻痺型
感染した人の30%は、この麻痺型。
噛まれたところや、引っかかれた部位に近い筋肉から麻痺していきます。
徐々に麻痺していき、昏睡状態に陥るまでの期間は、激怒型より長いと言われています。
脳炎症状が表れず、麻痺しそのまま昏睡状態に陥ってしまうので、誤診される事があります。
海外では、むやみに動物を触らない
私の住んでいるフランスの場合、スーパーの前などで繋がれてる犬をよく見かけます。
とってもおとなしい犬が多いのですが、動物好きの子供たちは触りたがります。
知らない動物を絶対に触ってはいけないと、口を酸っぱくして子供に言い続けていますが、親がいなければ絶対に撫でに行く我が子。
動物がいるたびにハラハラするのですが、過去に子供が犬に軽く噛まれて皮膚が切れてしまった事があります。
飼い主の人がいる犬だったので緊急用のワクチン接種は必要なしとの事だったのですが、洗浄してアルコール消毒、その後緊急で病院に行き、抗生物質を出してもらった事があります。
もし、我が子を咬んだ犬がウィルスを持っていたら…
狂犬病発生地域にいる時に、それらしい動物に襲われたら…
狂犬病の予防策は、むやみに動物に触らない事です。
子供が動物に咬まれてしまう症例は非常に多く、実際に感染者の4割は15歳以下の子供です。
フランスも日本同様、 輸入感染症例がある国ですが、症例には2タイプあります。
海外で感染しフランス帰国後に狂犬病を発症するケース、
感染した動物が持ち込まれたケースです。
前述の例ではスリランカで犬に咬まれた10歳の男の子が帰国後に発症したケース。
後述の例では、モロッコで狂犬病に感染してしまった犬をフランスに持ち込んでしまい、さらにその犬から感染が広がったケースがありました。
先進国にいたとしてもやたらと動物を触らない、これは鉄則だと思います。
狂犬病の予防接種を受ける
もし狂犬病発生地域にて、動物に接する機会が多い活動をする予定の場合、
狂犬病の予防接種を受けておく方がベストだと思います。
厚生労働省の狂犬病の関連ページでは、狂犬病の死亡者は年間で55,000人とされていました。
ですが、狂犬病を持っていたかもと考えられる動物との接触やケガが原因で、緊急用のワクチンを接種(
暴露後ワクチン接種 )した人の数は、年間で1,500万人!
狂犬病の恐ろしい所は、暴露後ワクチン接種を受けていたとしても、狂犬病を発症してしまったケースが多々ある事。その場合の生存率も100%に近い数字になります。
また渡航前に狂犬病ワクチンの接種が済んでいたとしても、現地で犬に咬まれてしまった場合、同日内に1回、3日後にもう1回と、2回追加で暴露後ワクチンを接種する必要があります。
もし海外で動物に咬まれたら?
さきほども少しお伝えしましたが、事前に狂犬病ワクチンを接種済みでも、動物との接触が原因で傷がついたり、傷口をなめられたりした場合、 現地にて即座に暴露後ワクチン接種が必要です。
事前に狂犬病ワクチン接種をした渡航者
ワクチンの事前接種を受けている人が狂犬病に感染した可能性がある場合は、接種可能なワクチンを2回、受傷日とその3日目に追加接種します。追加接種用のワクチンは近代的細胞培養法で製造されたワクチンを用いますが、事前に接種したワクチンと同じブランドのものでなくとも支障ありません。
日本旅行医学会より
事前に狂犬病ワクチン接種してない渡航者
ワクチンの事前接種していない人の暴露後予防法は、狂犬病免疫グロブリン注射20 IU/kgと14日間に亘って4回のワクチン接種(免疫抑制状態の人には1ヶ月に亘って5回接種)します。 傷口を洗浄した後、算出した用量の狂犬病免疫グロブリンRIGをできるだけ多く創傷面の周囲に浸潤させます。咬傷の周囲に注入する免疫グロブリン量は、創傷が小さい場合や指の咬傷では0.5mL程度とします。咬傷が広範囲な場合は、算出した免疫グロブリンの用量を超えないようにします。算出用量が咬傷全てに注入するのに不十分な場合は、咬傷の数に応じて免疫グロブリンを生理食塩水で稀釈し、全ての咬傷に注入できるように増量します。
日本旅行医学会より
まとめ
いかがでしたか?
先週に報道された、狂犬病の輸入感染症例でノルウェー人の女性が亡くなられたニュースですが、
動物好きの女性が、我が子と重なり思わず海外での狂犬病対策についてお伝えしました。
海外では動物をやたら触らない
感染症例の多い地域に行く場合は事前にワクチンを接種
現地でもし咬まれたらワクチンを同日と3日後に2回接種と覚えていた方がよさそうです。