2020年1月30日(木)、エアーフランスは中国本土行きの運休を発表。
でも実は…
ヨーロッパの各大手航空会社などが
- ブリティッシュ・エアウェイズ(イギリス)
- ルフトハンザドイツ航空(ドイツ)
- イベリア航空(スペイン)
1月29日の時点で中国本土便をキャンセルしているのに、
フランスの大手航空会社エアーフランスは、
上海・北京へのフライトは減便にするだけで継続を決定していました。
新型肺炎の発生地、武漢国際空港へのフライトは既に運休を決めていたのですが、
その他の都市(上海・北京)へのフライトは、運休でなく減便と決定。
武漢への運休理由はもちろん【 新型コロナウィルスの感染拡大による被害を防ぐため、乗客・乗務員の安全確保】なんですが、
上海・北京 行きの減便、当初の理由は【搭乗客のキャンセルが相次いでフライト需要が低下】した為です。
今回のエアフラの場合、
上海・北京行きのフライトは減便するけど運行しますよ!(2020年1月29日)
↓
やっぱり中国本土行きのフライトは全面的にキャンセルすると発表(2020年1月30日 )
↓
上海・北京行きのフライトが休止 (2020年1月31日 )
と展開が早かったのですが、それはなぜでしょうか?
エアーフランスのフライト、運休か減便か…
各航空会社のフライトプランニングは基本的にその会社の方針に任されていますが、
2019新型コロナウイルスの流行のように非常事態宣言が出された状態ならば、
政府の措置や協力要請などを受けて判断することがほとんどです。
疫病が起こっている場所にフライトを運航するか運休にするか、もしくは減便にするか…
最終的な決定は航空会社にあるのですが、
会社が「運行する!」と決定しても
乗務員は「行きたくない!」
そんな場合だってあります。
フランス労働法が労働者の権利をしっかり守ってる
フランスは労働者が守られている国です。
フランスの国技「長期的なストライキ」を見てもわかるのですが、
権利!権利!と主張して、あれだけ仕事に来ないのに首にならない保証があるのです。
フランスって経営する側が大変な国だな…と思うのは、
フランスでは労働者の権利が法律でしっかりと守られているからなんです。
フランスの労働法は細かくて「そんなん法律まであるの!」とびっくりするものもありますよ。
▼びっくりするフランス労働法の一つ「つながらない権利」
「つながらない権利 」とはどんな労働法なのか?簡単に説明すると、
休暇中はオフラインにして業務連絡をシャットアウトできる権利です。
休暇中の業務依頼は罰金が発生します。
これは世界初の労働法らしいのですが、
フランスってこんな細かいことまで労働法で決めてるんですね、
実際には、従業員数50人以上の組織が対象という事もあり小さな会社は影響を受けないし、フランスでは 62%の人が【休暇中でも電話や業務メールに応じる】 と答えているので、あまり公でない労働法なのかなと思います。
しかしフランスの労働法の中には、ほぼ100%発動するものがあります。
それが「撤退の権利( Le droit de retrait )」と呼ばれるものです。
「撤退の権利( Le droit de retrait )」って何だろう?
撤退の権利とは、任務中に健康や命に差し迫った危険がある場合、そういった状況で働くことを拒否できる権利です。
例えば日本では東日本大震災が起こった時に原発事故が起こりましたが、
下請け業者で働いている方など、自分の意向とは裏腹に現場に向かわされるケースが起こりました。
こういった場合、労働法で自身の健康や命を守るため業務を拒否することができます。
雇用主は従業員が会社の方針に従わなくとも、これを理由に解雇することはできません。
例え業務中であろうと「即座」に場所を離れる事ができます。
▼最近ではこんなことがありました。
SNCF(フランス国鉄)は当初、ストライキと発表していましたが、
実はストライキではなく「撤退の権利」でTGVなどの高速列車が止まりました。
通常、線路や踏切内に障害物がある場合、 障害物検知装置が作動し異変に気付くことができたり、現場や列車内には緊急用ボタンなどがあって、センターや後続列車に危険を知らせることができますよね。
ですがその時に大問題となったのは…
線路にある障害物検知装置が正確に作動しなかったこと、
それによりトラックと列車が衝突事故を起こしたこと、
さらに事故があったことを後続の特急列車に連絡する緊急用の通話ラジオが作動せず、連絡手段が途切れた事。
事故にあった列車の運転手が1500メートル走り、
緊急用の打ち上げ花火で後続列車の運転手に事故の危険を知らせるしか手段がなかった事が原因でした。
日本だったらあり得ない事なんですが、いつ大事故が起きてもおかしくない状況です。
一部の高速列車の運転手たちが「正確に作動 」する安全装置や事故防止のための点検装置を設置するように経営陣に改善を求めたストだったのですが、
こういった状況も「撤退の権利 」で業務から離れる事ができます。
ちなみにストライキと撤退の権利の見分け方は、
- ストライキ…48時間前までに通知
- 撤退の権利…即座にできる
ストライキは少なくとも48時間前までに通知をするのが義務ですが、撤退の権利で業務を放棄する場合は特に決まりはありません。
エアーフランス乗組員の搭乗拒否が相次ぎ上海・北京便が運休
なのでエアフラが決めた運航スケジュールでも、乗務員が業務を拒否すればスケジュール通りには運航できません。
感染力の強い新型肺炎のようなウィルスの感染など、
健康に明らかなリスクが強く懸念される場合は
パイロットや客室乗務員などの乗組員は、撤退の権利を理由に搭乗を拒否する事ができます。
現に中国行き( 上海・北京便 )のフライトは、エアーフランスの乗組員の搭乗拒否が相次いだために運休が決定しました。
そしてフランスは労働組合の力がとても強い国です。
エアフラが上海と北京の運航続行を決めた時も
「中国全土へのフライトを辞めるべきだ! 」とこちらも即座に反応してます。
アメリカのように労働組合が中国行きフライトを停止するよう訴訟を起こさなくても、従業員(個人)の判断で業務を拒否することができます。
エアーフランスはリアルタイムで状況の変化を確認し、マスクや手袋などを中国便(香港を含む)を担当する乗組員に配布するなど、スタッフの安全と健康が第一優先と発表しながらも、中国本土へのフライトのキャンセルはしませんでした。
ですが業務拒否が相次いだ為、働いてくれる人が確保できない。
こういった事が要因で変更を余儀なくされたのだろうと思います。
今回のような疫病が理由で中国行きフライトが一時停止した後、
業務が無くなり自宅にいたとしてもペナルティ無し(減給なし)の対応が取られています。
中国行きの最後のフライト(上海・北京行き ) が出発した時の乗組員は、希望者だけで構成されています。
「撤退の権利」で過去にエアフラが運休した例
過去にもエアーフランスの乗組員が撤退の権利で運休した例はあります。
2014~2016年に西アフリカでエボラ出血熱が流行した時です。
ただ新型コロナウイルスのように国際空港が閉鎖された例は初めてで、
感染者数の急激な拡大・緊急事態の場合は、予定されていたフライトが速攻にキャンセルされる場合もあります。
エアーフランスがスケジュールを決めていたとしても乗務員が拒否する場合もあるからです。
ウィルスの新たな感染者が無くなるまで、もしくは非常事態宣言が撤回されるまで、何時まで中国本土へのフライトが停止するか分かっていません。
エアーフランス中国行きフライトの2020年3月15日まで停止
当初は、2020年1月31日~2020年2月9日までとされていた停止期間も
2020年3月15日までと期間延期が発表されています。(2020年2月9日の情報)
参考サイト
https://www.bfmtv.com/economie/coronavirus-air-france-suspend-les-vols-vers-wuhan-et-reduit-ceux-vers-pekin-et-shanghai-1849186.html
https://www.bfmtv.com/societe/il-etait-hors-de-question-que-j-aille-en-chine-une-hotesse-d-air-france-raconte-sa-peur-du-coronavirus-1849867.html
https://www.bfmtv.com/economie/air-france-les-syndicats-des-navigants-reclament-l-arret-des-vols-vers-la-chine-1849557.html