アジア人が海外にいる時、一番気に障るジェスチャーって【つり目ポーズ】なのではないかと思います。目を吊り上げるポーズを欧米人からされたと聞くと「差別されている」「失礼!」と感じる人や不快な思いをする人も沢山いると思いますが、やっている側は、あまり深く考えていないだけの時もあります。
無意識に軽めの「つり目ポーズ」をしている人達
もう少しポジティブに捉えてもいいのかなと思う場合の「つり目ジェスチャー」について。
私は在仏12年目ですが、コロナが流行りだしたときに「中国人!」と遠くから変なおじさんに言われた事、少し距離を取られた事があるだけで、それ以外ではあからさまな差別をフランスで受けた事はありませんが、「さっき、ちょっと目を横にひっぱりました?」的な場面に遭遇した事は幾度かあります。
ですが大体のところ、その人達はアジア人に対して差別的どころか、むしろ好意的な人が多かったのです。
つり目ポーズがアジア人にとって屈辱的なポーズだと知らない
日本人を含めたアジア人は、「つり目ポーズ」に過敏になっていて、ちょっと目を横に引っ張られただけで「見下されている」と感じる事があるかもしれません。
ただ、知り合いと話をしている時などに出現するちょこっと目を横にひっぱったポーズは、差別意識や悪意もなく、見下しているつもりも全くないケースもあります。
信じられないかもしれませんが、つり目ポーズがアジア人にとって屈辱的なポーズだと知らない人はまだまだいるし、ちょっと目を横に引っ張る仕草が、どれほどネガティブな印象を与えているかは知らないのです。
ステレオタイプが表れている。深く考えていない
ただ、アジア人の見た目についての固定観念は、小学生あたりから確実に根付いていて、アジア人美女と言えば「サラサラな真っ黒なストレートヘア」「細長い目」。アジア人男性の場合は「メガネ」「真面目」を真っ先に思い浮かべる欧米人がほとんど。そして、結構な割合でアジア人の顔の見分けが出来ない人もいます。
実際に、子供が学校から借りてきた本では、アジア人の目は一本線で描写されていて、登場人物の目がすべて細く大人も子供も髪型は違えど同じ顔でした。
▼小学1年生用のフランス語教科書。バイブル的な存在の「Taoki」
多分、教科書の絵を担当していた人には「アジア人の顔と言えばコレ」のように小さい頃からの固定観念をそのままフランスの小学1年生が使う教科書に反映させていたのだと思います。そこには差別意識などは何もなく、あるのはただ自分のステレオタイプだけで深く考えていないのです。
こういった人が目を引っ張る仕草は、アジア人に対するステレオタイプをそのまま表現しているだけの時もあるので、あまり深く考えすぎずに「アジア人はそれされると傷つくのよ」と添えると、自分たちのジェスチャーが人を傷つける行為だったのだと初めて理解してくれるのです。
ポジティブに捉えたいジェスチャー
しかしながら実際、アジア人の目が細いからバカにしているのか?なんで話しながら目を横に引っ張る仕草をするのか?というと、ただジェスチャーが付き物なだけで、ポジティブな理由が隠されている場合があります。こういった時は会話の内容でもわかるものなので、目を引っ張るジェスチャーをされたからと言って悲しくなる必要はありません。
トレンドメイク「つり目メイク」のポーズ
インスタグラムやTikTokで広がり続けている美容トレンド。
#foxeyesmakeup #foxyeyes とハッシュタグを入れて検索すると物凄い数の「つり目(キツネ目)メイク」をSNS上で見つける事ができます。
このトレンドメイク法は、目頭の切開ラインと目尻から吊り上げるようにアイライナーを引く事で切れ長の目元に演出するメイクなのですが、みなさんフィニシュの時にさらに目を吊り上げて、よりシャープに目元を強調するので、「これはアジア人差別なのではないか?」「目を吊り上げる行為はアジア人を軽蔑している行為なのですよ」と海外の色んなメディアで取り上げられています。
▼フィニッシュの目を吊り上げるポーズがアジア人差別なのでは?と混乱している海外のメディア。
To women, have you tried “fox eye”?#Foxeye https://t.co/4HO6aD8LME
— DevGru (@t12cloudmaker) August 18, 2020
▼でもこれは元々、ケンダル・ジェンナーとかベラ・ハディッドなどのセレブがトレンドの火付け役なだけであって、ここにアジア人差別の意識はないのでは?と思います。
▼この件に関してはアジア人の方が冷静に判断できるのかもしれないと思いますが、ただのメイク映えを気にしているだけなのだとポジティブに考えた方が良いです。
「切れ長の目が素敵」だと思っている欧米人は多い
でも実は「つり目メイク」がトレンドになるずっと前から、切れ長の目メイクは大人気で、アイライナーを目尻に長めに引いて目元を強調する女性も多いですよね。
日本ではアイプチで二重にしてバッチリメイクをしている人も多いですが、アジア人のクールビューティに魅力を感じている欧米人は男女ともに沢山いて、アジア人のエキゾチックなアーモンド型の目元は、欧米人が真似したくても真似できない長所になっているのです。
「目が素敵」と実際に言ってくれる人も多いので、そういった時に出るジェスチャーはとってもポジティブな意味しかありません。
「目が小さくて可愛い」という思い込みの時
欧米人からしてみると、アジア人の目が小さく見えるのは事実のようですが、「目がちいさくて可愛い」と思い込んでいる人たちがいます。
昔、子供と同じ学校にいた日本人の女の子がクラスの人気者で「何でそんなに目が小さいの!可愛い!」と、フランス人保護者からもベタ褒めをされていました。ただ不思議なのは、そのすごく可愛い日本人の子の目は、丸くクリっとした「つぶらな瞳」で決して小さくはないのです。
周りのお友達と目の大きさは変わらないのですが、小さくて可愛いという固定観念があるようで、その子の話をした時に、肩をすぼめながら目の幅を狭めるジェスチャーをしている保護者がいました。
ただそれは本当に可愛いの意味で彼女の眼をからかっているわけでもありません。
私も義理家族に「目が小さいね」と幾度か言われてますが、義理母と義理妹の目は小粒なので、その2人よりも目の面積は大きいのです。なのでなぜなのかと突っ込んで聞いてみると、ただ「一重まぶた」の事を言っていただけで、目の大きさ自体は関係なしでした。
その時も指で瞼の所をシュっとするような仕草をするので、会話とジェスチャーが単にセットになっているだけなので深く考える事はないと思います。
「つり目ポーズ」差別かも…見下されていると感じるケース
ポジティブに捉えたいジェスチャーがある反面、やっぱり残念なケースもあります。フランスとドイツで物議を醸したケースを紹介してます。
フランスのテレビで放送された不快に感じる目を吊り上げるポーズ
フランスでは「Un dîner presque parfait」という人気番組で、人種差別だと指摘された内容のものが放送されてました。
「アジアの精神」をテーマにした夕食会で、出演者たちが目を吊り上げるポーズ&変顔&片言で喋るアジア人を真似る様子が放送されましたが、テレビ局さえも何の疑問も持たずに編集&放送した所を見ると、ただ面白かったくらいの認識だったのでしょう。
▼「Un dîner presque parfait」で問題になった部分。目を吊り上げ話し方を真似てる所。
#2019 Asiatiques moqués dans #Undinerpresqueparfait sur @W9 par des participants qui se tirent les yeux sur fond de bruits non-reconnaissables (kung-fu ou langue bizarre). Ces gestes sont insupportables ! Non, CE N’EST PAS ACCEPTABLE pour les spectateurs, chaînes, participants pic.twitter.com/EmPGsPiXUt
— grace ly (@gracefullyfried) July 24, 2019
アジアと聞くと「カン・フー」と言ったり、目を吊り上げる行為はステレオタイプそのもの。アジア人からしてみると不快感は最高潮になりますが、日本のテレビ番組でも、浜ちゃんが黒人さんに扮して黒塗りしていたり、松ちゃんが高い鼻をつけているのを笑っているので、それと同じ類なのではないかなと思ったりします。
ちなみに番組を制作したW9は後日謝罪をし、この放送回は二度と放送されないよう決定しました。
つり目ポーズでバカにされた時の対応
知らない人が近くにわざわざやってきて、人の嫌がる事を言ってきたり、ジェスチャーをかます…
稀だけれども、そういった人達は確かにいます。ただ、皆まともな人ではないし、そういった人は現地人からも相手にされていないような人が多いのです。
▼例えばドイツで話題になったこういった人達の場合。
Cette Sud-Coréenne a eu le droit à plein de remarques racistes à Berlin alors qu’elle était en live sur Twitch. 🤦🏻♀️ pic.twitter.com/3ZMQ391iXv
— AJ+ français (@ajplusfrancais) April 22, 2019
最初に登場してきたおじさんは、あからさまにアジア人を見下しているのだと思いますが、目を吊り上げたポーズと一緒にイントネーション付きの喋り方でバカにしながら真似ています。ただ、2人目のおじさんは便乗しにやってきた失礼な人で、つり目ポーズの何がいけないのか理解していないようです。
そもそも常識ある人は、真横の席に割り込んだりしてきませんよね。酔っ払いか何かだったのかと思いますが、こういった残念なケースもあるわけで…
ただ、この動画の韓国人の彼女の対応がとても参考になって、ドイツを一旦褒めてから、目を吊り上げるジェスチャーを辞めて欲しい事。そのあからさまなポーズは差別である事。落ち着いて相手に伝えている所に好感が持てました。
こういった行為をされるのは稀ですが、カーっと怒りが湧いてくるのは当然です。ただヒステリックに怒鳴るよりも、もう少し周りのテーブルに聞こえるような声で落ち着いて大人の対応をするだけで良いのです。後は、こういった人たちとは関わらない。周りも変な人だと気づいてくれています。
その後の通りを歩いている場面でも「Tching tchang!」と言いながら近づいてきている人。これは中国人(大体は)が外国語を話すときのイントネーションをバカにした言い方なので、かなり無礼なのですが、「Ni hao!(ニイハオ)」には差別意識はないのではないかなと思います。
おわりに
いい大人なんだからつり目ポーズやっといて「知りませんでした」では通用しない。と思うかもしれませんが、日本人が外国の人に「顔が小さいね!」とい言って困惑させているのもけっこう見るので、お互い近い事を思っているかもしれません。
つり目のポーズすべてが差別なのかというと、そうとも言えない時と場合もあるので、ジャッジは難しいですが、もし不快な思いをしたのなら「そのポーズをされると悲しくなるので辞めて欲しい」とハッキリと伝えてもいいのです。
知らない間に誰かを傷つけている行為、目を引っ張ったポーズをしているけれども差別をしているつもりもなかった…というのも事実あります。常識ある人の場合は改めてくれるので、後からモンモンとするよりも、その場で口に出して言ってみましょう。