【衣類回収ビジネス】寄付したはずの洋服が高値で取引されているフランス

【衣類回収ビジネス】寄付したはずの洋服が高値で取引されているフランスフランス現地情報

使用しなくなった衣類はゴミ箱に捨てるよりも、リサイクルや寄付を活用して古着に第2の人生を与えたいと考える人は多いんではないでしょうか?

フランスでは、衣類用のリサイクルボックスに要らなくなった服を入れたり、人道支援活動を行っているアソシエーション(非営利組織)やNGOに衣類を寄付する人が増えていますが、それらの団体が処理できるキャパシティをはるかに超えた量の衣類が集まっています。

少し前に放送されたレポート『寄付やリサイクルの為に集められた衣類がどのように活用されているのか?』が最近身近で話題になったので調べてみました。

フランスで回収された衣類は1年で15万トン。でも…

フランスでは至る所にリサイクルボックスが設置されていて、リサイクルマークがついた衣類回収ボックスをよく目にします。

▼衣類のリサイクルボックス


スーパーの駐車場だったり、粗大ごみ置き場だったり、設置されている場所は様々ですが、利用している人が多いので、上の写真のような小さめのボックスだと週末になれば中はパンパンに詰まってしまう位、箱は服で溢れかえっています。

フランスで回収されている衣類は1年で15万トン。放送されたレポートでは、リサイクルや寄付をしたい人はフランスでは増加傾向にあるので、今後も大量の衣類が回収されていくと言ってました。

寄付を募っている支援団体に衣類を寄付したのならば、本当に支援を必要としている人に衣類が届いて欲しいと願っているし、

リサイクルのつもりで回収ボックスを利用しているのであれば、ほとんどの方は下の図で紹介されている様な有効活用を皆さん想像しているのではないでしょうか。(画像クリックで拡大)

しかし実際には、NGOなどの団体が処理できる量をはるかに超えている為、ほとんどの衣類は本来の目的とは違った活用がされています。

フランスで寄付された衣類、大半は衣類回収ビジネスに利用

Ou vont les vêtements que l'on donne ?

上は実際のリポート動画ですが、この動画の1分13秒あたり~。

この回収業者は、地元NGO団体などに直接衣類を取りに行き、残りの75%はリサイクルボックスから衣類を回収しています。

なので結局のところ、NGOに寄付された衣類もリサイクル用の衣類も同じ業者が回収していて、とある企業の倉庫にまとめられています。この業者が回収している衣類は一月に500トン以上にもなり、大量の衣類が一旦倉庫にストックされ、そこから仕分け・選別場に運ばれるのです。

この動画では、選別された衣類の2/3は売買されている事が説明されていましたが、フランス全体で回収されている衣類15万トンなので、約11万トンはリサイクルセンターまでいかずに海外やフランスの市場に流れています。

その中にはNGO団体に寄付した衣類なども含まれていて、利益率の高いビジネスの代物として流通している。と動画の中で指摘されています。

支援が必要な人へ寄付される衣類は3%

なぜNGOに寄付したはずの衣類が売買されているのか?というと、NGOで対応できる以上の衣類が集まりすぎて物流コストが負担できないからです。実際にNGO団体に寄付された衣類の内、貧しい方や支援が必要な方に届けられている衣類は全体の3%しかありません。

キャパシティはたったの3%です。

残りの97%は専門業者に委託して渡しているので、寄付してもほとんどの場合は動画で紹介されていたように、回収業者が衣類を引き取りリサイクルか売買する流れを辿るようになっています。

リサイクルされている衣類は全体の1/3だけ

衣類回収ボックス・寄付された衣類のうち、リサイクルされている衣類は全体の1/3だけなんです。思った以上にリサイクルされている衣類は少ないですよね。

動画の中では、街中で見かける回収ボックスの中には、リサイクルや寄付よりも営利目的で設置している会社のものが交っている件についてもふれていました。

リサイクルするつもりで回収ボックスに自分の衣類を入れたけど、実はそのボックスはリサイクル用ではなかった…なんてこともあります。

2/3はフランスを含む世界中の卸売業者・古着屋に売られる

選別センターで仕分けされた服の1/3はリサイクル行きですが、残りの2/3はフランスを含む世界中の卸業者に売られています。

フランスで古着屋さん巡りをするのが楽しいですが、その古着屋さんに置いている服もここからきている場合があります。15万トンのうち1万1千トンは古着屋さんに流れ着くそうで、寄付した服が古着屋さんで売られていた…なんて偶然も十分にありえそうです。

動画の中ではオシャレな古着屋さんがでてきましたが、コレクターが高値で購入する為、時には1000ユーロ以上の値が付くお宝ものもあるそうです。

衣類は1トンにつき400~500ユーロで売れる

衣類は1トンにつき400~500ユーロ、日本円でおよそ5~6万円ちょっとくらいで取引されています。

動画で出てきた回収業者の場合、1か月で500トンの衣類を回収していたので、そのうちの350トンを卸売業者に400ユーロ/トンで買い取ってもらえば、14万ユーロの利益を上げる事ができます。

14万ユーロって、日本円にすると約1730万円です。原価なしで1730万円を稼げるのです。また残りの150トンもリサイクル会社から少しの利益を分けてもらえるので、もうちょっと稼いでるはずです。

6年の間に取引額が5倍増え。衣類回収ビジネスは過熱

実はこういった衣類回収ビジネスは、原価ゼロで服や靴を引き受ける事が出来るので、非常に利益が生まれやすく新規参入業者が増えています

取引額も6年前は、2020年現在の1/5くらいしかなかったそうです。だいたい80~100ユーロ(1万~1万2千円)くらいです。それが6年間の間に5倍の取引額になっています。

なので、回収業者が増えているのですが、中には非営利団体のアソシエーションを装って個人宅に回収にやってくるエセ事業者も増えています。

フランスで一軒家に住んでいる方は既にチラシを受け取っている人も多いのですが、紹介した動画では寄付を装っていたアソシエーションは実は有限会社だったことを暴いています。

おわりに

今回紹介した動画で指摘されていた問題は、寄付やリサイクルの為と渡した衣類が実は原価ゼロの転売ビジネスに利用されている事だったのですが、最初っから、古着10キロで○○ユーロで買い取ります!と宣言しているのであれば特に問題なかったのかなと思ってます。


▼もし寄付目的で衣服を渡したいのであれば、信頼のできる場所や個人に直接届けたいと思います。

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