ABA「応用行動分析」トークンエコノミー法で口うるさい親を卒業する

教育・子育て・バイリンガル

まだまだ寒さが残る春先の遠足に、コートを忘れ、リュックサックを忘れ、Cartable(ランドセル)を背負い、さらに遅刻していった我が子を見て流石に焦り、ABAを応用した方法を再導入する事に決めた話しと結果について。

ABAとは何?といった素朴な疑問から、実際の子育てについて、ABAを応用するメリットを説明してみます。

ABA「応用行動分析」って知ってますか?

幅広い分野で応用されているABA(Applied Behavior Analysis)は、特に発達障害・知的障害を持つ子供達などの福祉・教育プログラム応用で注目され、身辺自立、社会的・コミュニュケーションスキルの向上、問題行動などに対するテーマで成果を上げている行動分析学の一つです。

ABAをベースにした教育プログラムの特長は、子供(個人)だけを対象としたものでなく、子供達を取り巻く環境をまず最初に探り、不安などのきっかけになっているマイナス要因を取り除く事。環境要因の分析を第一に考えられている事ではないかと思います。

なぜ子供達がそういった問題行動を起こしているのか?問題行動の「元となるもの」を探し、具体的な行動を記録する。その分析を元に適切な環境や条件を整え、子供達の発達段階に合わせた支援(指導)をする療育法なのです。

ABAをベースにした療育プログラムは、子供達一人ひとり個性が違うように子供によって異なるのですが、ABAが生まれたアメリカでは、自閉症児を対象にした早期集中プログラムなどが有名です。

療育の現場では2歳代からの早期療育が求められているので、「早期」「2歳代から」「なるべく早く療育を始める」こういったワードが沢山溢れていますが、実はこのABAプログラム、障害を持っている子供だけでなく、健常児の子供にとっても良い効果があるし、活用の仕方を間違わなければ年齢問わず応用できるのです。

子供は褒められると嬉しい。自己肯定感を高め伸ばしていくABAベースの子育て

では次に具体的なABAの実践を確認してみましょう。

まず実践する前に注意したいポイントがあります。それは、子供の発達段階は一人ひとり異なるので、同じ年齢の子供でも成長スピードに個人差がある事です。

大事なのは、決して難しい課題を与えず、挫折感を与えない事。そして同じ年齢の子供達と比べるのではなく、その子供の発達年齢にあった教え方が必要なのです。

ABAの実践例。身近なお着替えの課題の場合は?

(課題例)入園前に一人で着替えを出来るように練習したい。

小さなボタンが沢山ついたシャツをもってきて、着替えの練習をさせる。

手先がまだまだ上手に使えない入園前の子供に、いきなり小さなボタンがついた洋服で着替えの練習をさせるのは酷です。この練習は入園前の子供にとっては難易度が高すぎて、発達年齢にあった良い方法ではないのです。では、ABAの実践では、どのように支援するのでしょうか?


▼ABA実践プログラムではスモールステップで一人着替えを教えていきます。

ステップ① 確認・分析する

まず、お着替えの練習をする前に、洋服が一人で脱げるか?もチェックしましょう。ここでもし、洋服が脱げなければ、洋服を脱ぐ練習がまず先です。

ステップ② 環境や条件を整える

洋服を上手に脱げるようになってからお着替えの練習に突入します。しかし、いきなり着替えの練習をするのではなく、まず先に着替えに集中できるような環境を作る事が肝心です。

  1. 着替える場所を選ぶ
    ⇒タンスの前など子供に今から着替えますよと認識させる。
  2. 気が散りやすい状態にしない
    ⇒テレビを消したり、オモチャが視界に入らないようにして、着替えに集中できるようにする。
  3. ゆっくり着替える時間を作る
    ⇒忙しい朝ではなくお風呂の前後など、時間に余裕がある時を選ぶ。
  4. 子供が一人でも着替えやすい服を選ぶ
    ⇒伸縮性のある服、ウエスト周りがゴムなど、装飾がないゆったりとした着替えやすい服を選ぶ。
  5. 洋服を着替える順番に並べて置く
    ⇒どの順番で洋服を着ればよいのか?着る順番に分かり易く並べて置く。
  6. 洋服の前後を確認
    ⇒例えばパンツを着替える場合、パンツをはく前に前後を一緒に確認する。

ステップ③ 最初は手を添えて手伝う。子供は引き上げるだけでもOK!

教え方はとてもシンプルで取り組むべき課題を小分けにして進めていきます。

パンツの前後を確認したら、座った状態(低めの椅子に座っても可)でパンツの上を両手で持たせて、右足、左足と順番に足をパンツに通す。出来なければ、最初は手を添えて手伝ってもOK。そして立った状態で最後までパンツを引き上げる。出来たら直ぐに褒める。

まずはお着替え全てではなく、パンツをはくだけでもOKです。

ABAは、小さなスモールステップで「出来た!」を達成していくので、肯定感を高めながら子供達の自信を育てるのが大きなメリットです。

叱らない子育てって難しい…そんな時はABA療法「応用行動分析」を試してみよう

このようにABAは幼児期の身辺自立など生活課題を無理なく一つ一つ教えていく役立つ子育て法です。出来ない事を責めない。怒らない。出来たら直ぐに褒める。成功体験を繰り返していくので、子供の自信を育てる大きなメリットがあるのです。

しかし!

実際の子育て現場にいると、こういった丁寧な子育てが段々と難しくなってきます。

なぜなら、年齢が進むごとに困りごとが複雑になっていったり、

兄弟姉妹が一人、二人と増えていく度に、誰かが愚図りだしたり、泣きわめいたり、思うように準備が進まなくなって疲れてくるなど、子育てが綺麗ごとではなくなってくるからです。

ABAである程度環境を配慮できるものの、朝の寝起きが悪い子は悪いし、お出掛け時間ギリギリになってトイレに行きたくなる癖はなかなか抜けません。

朝のスケジュールを作り、適切な声掛けをする。さらには1日の時間割を確認する。

タイムタイマーを購入し視覚的に時間を確認させていても、朝の身支度スピードが劇的に変わるわけではありません。

兄弟揃って寝起きが悪く起きれない、朝の身支度が遅い、時間を気にしない。水筒を出すタイミングが悪い。

こういった場合はどうすればいいのでしょう。

「早く着替えなさい。」
「早く朝食を食べなさい。」
「歯磨きしたの?」
「目ヤニついてるやん」
「あと、5分だよ。」

急かしても急かしても、靴のスクラッチを完璧に合わせるまで、付けたり外したりを繰り返し過ぎ去る時間。ギリギリになってウンコに行く子供。登校の時間が迫っている焦り。

「早くしないさい!」

と鬼顔で毎日同じことを言い続け、せかすようにやっと学校に送り出した直後、「忘れ物」していた事が多発すれば、親御さんはどういう気持ちになるのでしょう。

毎朝毎朝、起きてから1時間ちょっとの間でどれだけストレスが溜まるのでしょうか。圧倒的にイライラしている人が多いのではないかと思います。

子育てはとは、至る所で思ったように上手く進まない事が多く、毎日同じことの繰り返しです。根気が要求されるのですが、その根気が力尽きてしまうと、子供を怒鳴り散らかしてしまう。夜になって子供のかわいい寝顔を見ては自分の行いを反省し自己嫌悪になってしまう…こういった事も親側で繰り返されているのではなかろうかと思うのです。

子育てとは、親の自己コントロールとの戦いでもあるのです。

口やかましくなる前にABAトークンエコノミー法(ポイント制)を導入する

しかし、冷静になって考えてみると親が口うるさ過ぎるって子供にとって悪影響です。

一番の理想は、子供が自分の力で考えて行動できるように仕向けて行く事。ガミガミ言い続けない事ではないでしょうか。

実際に私が小さい頃、同居している祖母がとても口うるさい人で、私は絶対にお婆ちゃんみたいにならない!と思っていたのに、多分とても口うるさい母親になっているのだろうと自覚があります。


実は昔、我が家では、ABAプログラムのトークンエコノミー法というのを子供が小さい頃にやっていてたのですが、

良い行動をしたら思いっきり褒めて表に花丸をつける。その花丸が10個たまると、おやつにケーキを作ったり、10分アニメを一緒に見たり、好きなゲームをしたりと、トークンといわれる好子(花丸・スタンプ・シールなども可)を渡してポイント制にしていました。


▼ちなみに好子はウィッキペディアでこのように説明されていました。

好子(こうし)または強化子(Reinforcer)とは、ある行動の直後に出現し、以後のその行動の生起頻度を増加させるような環境の変化(刺激の提示や刺激の増加)のことを言う。簡易的に、行動を強化するものと説明されることがある(ある行動があり、その行動の直後に提示されることで、その行動の生起頻度が増える)。

逆にある行動に対して好子(強化子)の提示を中止、または減少させることによって、行動の生起頻度を減少させることができるものも強化子として定義される。

https://ja.wikipedia.org/wiki/%E5%A5%BD%E5%AD%90

子供は褒められると嬉しいし、ポイントがたまれば好きなアクティビティやオヤツを選ぶ事ができるので、どんどん褒められた行動をするようになる。

その反面、お友達を叩いたり、危険な行動をするとポイント減らすなど、望ましくない行動はポイントを減らす事で減少させていました。

褒められたら喜んでいたし、口で何度もガミガミ言わなくても、子供自身が理解して行動していたので、口うるさくしていなかったのです。

目標を一緒に決めてポイント制を導入する

しかし、時が経つにつれて天然でボーっとしている長男と、1日中機関銃のように話す次男と生活すると、子育てだけでお腹いっぱいになってきて、いろんな事に気が回らないようになりました。

しかも我が家の場合、次のような課題があり、これらの事が続いてくると、私のガミガミ度が急上昇するのです。

  • 朝起きれない
  • 忘れ物があまりにも多い
  • 朝の身支度が遅くいつもせかしている
  • 時間を守れない

長男はもう10歳だし、次男は7歳。

ガミガミ言う事が逆効果になる年齢なので、もう一度ポイント制を導入する事に決めたのですが、

こういった場合、子供もある程度の年齢に達しているので、目標を一緒に決め、説明する事が重要なようです。


▼例えば、困り事が「遅刻」「忘れ物」「身支度が遅い」のであれば、

学校の始業時間から逆算してどのように朝の身支度を進めていけばよいのか?

子供達に考えてもらう必要があるのです。


▼時間毎にやるべき事を示していくと良いので、7h30に起床してから8h15に登校するまでの身支度の進め方をスケジュールにしてみました。

歯磨きを忘れているスケジュール表…
8h10のところには、忘れやすいマスクと水筒のイラスト付きです。

年齢にあった好子を決定、ルールを決める

そして「好子」も重要なポイントなんですが、10歳の子供に花丸は効き目がありません。

年齢にあった好子、大好きなものを選ばなくてはモチベーションがなくなるのです。

我が家の場合、週末の土・日だけゲーム、もしくはテレビが2時間見れるルールがあるので、

もしスケジュール通りに次の事を自分たちで達成できれば、ゲーム時間が10分加算されるポイント制を導入してみました。

  • 目覚ましをかけて自分で起きる
  • 朝の身支度を時間を見ながら進める
  • 忘れ物をしない
  • 時間を守る


▼(例)ポイントは集計出来るようにGoogleフォームを利用してもいいかもです。

Googleフォームでポイント集計

▼もしくは黒板を設置して子供達にポイントを計算させるのもよいかも

一日に得た時間(ゲームが出来る時間)を黒板に書いていく様子。

ABAのトークンエコノミー法(ポイント制)を導入したらできた事

我が家の場合、ゲームが大好きという事もあってか、

ルールを決めた翌日には、

  • 朝は7時20分に自分で起床
  • 消防士のように即座に着替える
  • 朝食&朝食の準備を一人でする
  • 歯磨き&顔を洗う
  • トイレ
  • 持ち物の準備
  • 水筒を自分で洗う&水を中に入れる
  • 8時に身支度完了

朝食の準備と水筒を洗って水を入れる、この2つは頼んでもいないのに自分でやりだしたし、朝全く起きれなかったのに、目覚ましを自分でかけて予定よりも10分早く起床出来るようになりました。

しかも翌日からいきなりです。

その上、8時に身支度が完了して、時計を見ながら登校の時間を確認するようになったので急ぐ事もなくなり、トイレの時間もゆっくりできて結果としては大満足です。

子供だって朝からガミガミ怒られるばかりでは何のやる気もないし、ストレスが溜まるばかりだけど、

こうやって、自分で時間通りに朝の身支度を完了できれば、10分のゲーム時間が加算してもらえると思うとモチベーションが劇的にアップしたようです。

おわりに

もし、毎朝のルーティンで同じように困っていらっしゃるご家族におすすめのポイント制。

ABAの応用にヒントを得て、我が家でも再導入しましたが、

小学生くらいのお子さんでも問題なく適応します。

しかも本人のモチベーションが高く効果覿面でした。

子供を怒ることなくモチベーションのみで行動を起こさせる力があるので、興味がある方はぜひ試してみてください!