福利厚生の一環として日本でも注目されつつあるサービス「チケットレストラン(Ticket Restaurant)」
チケットレストランとは、従業員のランチ代約半分を企業が負担してくれる「食事券」なのですが、レストランやコンビニなどの加盟店でチケットを提出すれば、合計金額から食事費用の一部(または全額)を負担してくれる有難いサービスです。
チケット発行元「Edenred Japan」によると、日本国内では…
- 2000社がチケットレストランを導入
- 毎日15万人が活用している
- 日本全国の加盟店、60,500店以上で使用可能
チケットレストランの導入を検討する企業は今後も増えそうなのですが、さて、この便利なチケットレストランについて。
フランスの昼食補助サービスはどうなっているのでしょうか?
フランスのチケットレストランと昼食補助サービス
フランスでは企業規模によって、何かしらの昼食補助サービス対策を考えなければいけません。
例えば、大企業など従業員数が多い場合、社員食堂だったり、ケータリングサービスを利用したりと、従業員の昼食補助は義務になっています。企業規模によって昼食補助サービスの体制は異なりますが、チケットレストランはその中の一つです。
▼従業員数が25人以上になると「従業員の要望に応じて」食事が出来る場所や必要な物を最低でも設置する義務が発生する。
チケットレストランは義務ではありませんが、もし上記のような体制を社内に整える事が不可能な場合、チケットレストラン(Titres-restaurant)を検討する企業がほとんどではないかと思います。
▼チケットレストランとは?
※フランスでは、Ticket Restaurantの他にも、Chèque Déjeuner, Chèque de Table, Pass Restaurant…など様々な種類のものが流通してますが、まとめて「Titres-restaurant」と言っています。チケットレストランはTitres-restaurantの中の一つです。
チケットレストランの金額に上限はなし
▼チケットレストランをめくると、下の写真のように食券が束になっています。
就業日数によっても違いますが、フルで週5日働いている場合、月平均すると20枚のチケットが中に入っています。働いている日数、バカンスの取得有無によって、月ごとにチケットの枚数が変わる仕組みです。
そしてチケットの1枚1枚には、上写真のように金額が表示されていますが、実は、このチケットレストランの金額に上限はありません!
毎日、レストランでメニューを注文できるくらいの高額なチケットもあれば、サンドイッチメニューしか購入できない額のチケットまで幅が広いのです。
私がこれまでに目にしたチケットレストランで一番高額なのは13ユーロでしたが、上流階級に行けば、もっと高額なチケットレストランが存在するのではないかと思います。
チケットレストランの平均額と企業負担の割合(フランス)
la Commission nationale des titres restaurantsによると、フランスのチケットレストラン平均額は7.70ユーロ。日本円に換算すると約1000円です。
フランスでは、食券に表示されている金額の50%~60%を企業側が負担するので、例えば平均的な7.70ユーロのチケットレストランであれば、従業員が負担する金額は1枚につき、3.08~3.85ユーロ(約400~500円)になります。
▼平均額のチケットレストラン1束の価値は、1月で約2万円。
1月20日勤務した場合、7.70ユーロ×20日=154ユーロ(約2万円)
▼毎月の企業負担額と従業員負担額の内訳。
企業負担 | 従業員負担 | |
企業負担60% | 92.4ユーロ(約1万2千円) | 61.6ユーロ(約8千円) |
企業負担50% | 77ユーロ(約1万円) | 77ユーロ(約1万円) |
1日の使用限度額は19ユーロ(コロナ禍中は38ユーロ)
実はチケットレストランには幾つかの注意点があるのですが、1日に利用できる限度額は19ユーロ(約2450円)と決まっています。
例えば、8ユーロのチケットレストラン保持者が15ユーロのランチ代を支払いたい場合、チケットレストラン2枚で対応する事も可能です。
※「チケットレストランの金額に上限はなし」だけど、1日の使用限度額は決まっているので、19ユーロ以上のチケットレストランは非常に珍しい。
▼現在は2021年3月。コロナ禍の真っ最中なのですが、飲食店などの経済的困難に対応する為、チケットレストランの利用方法に変更が生じています。
- 1日の利用限度額、19ユーロから38ユーロへ2倍に引き上げ(2021年9月1日まで適用)
- 日曜・祝日も使用可能
- チケットの有効期限を延長。2020年発効分を2021年8月31日まで延長
チケットレストラン利用の注意点と権利
チケットレストランは、飲食店、ホテルのレストラン、スーパー、総菜屋さん、パン屋さん、デリバリーサービスなど至る所で利用可能ですが、利用の際に知っておきたい事があります。
▼思いつくところ以下のような注意点・権利があります。
フランスの食事補助非課税枠は日本の4倍以上
フランスの食事補助非課税枠(非課税対象になる企業の補助額)は毎年変化しますが、2021年は1枚のチケット当たり「5.55ユーロ(約715円)」です。
フランスの食事補助非課税枠(1か月分・企業負担分)
(例)フル勤務でレストランチケットを20枚貰った場合…
1月あたりの食事補助非課税枠(企業負担) |
5.55ユーロ×20枚=111ユーロ(約1万4300円) |
この場合、企業が負担する食事補助の非課税限度額が1月で111ユーロ。この金額までなら給与所得扱いされません。
日本とフランス、食事補助額の比較
日本とフランス、一月当たりの補助額を比較すると、フランスの食事補助非課税枠は日本の4倍以上です。実は日本の食事補助非課税枠は昭和59年から変化がなく、金額設定が現在の物価とかけ離れ過ぎているらしいのです。
日本の食事補助額 | 3500円/(1か月) |
フランスの食事補助額 | 111ユーロ、約1万4300円/(1か月) |
チケット1枚当たりの非課税額(フランス)
▼フランスの企業は50~60%の食事補助を負担するので、トータルで考えると1枚のチケット辺り9.25ユーロ~11.10ユーロまでなら非課税扱いになります。逆にこの金額を超えると課税対象となるので社会保障負担金が増えます。
企業負担 | 従業員負担 | 食事補助非課税枠(チケット1枚あたり) | |
企業負担60% | 5.55ユーロ | 3.7ユーロ | 9.25ユーロ(約1200円) |
企業負担50% | 5.55ユーロ | 5.55ユーロ | 11.10ユーロ(約1430円) |
▼「食事補助非課税枠」について
日本の食事補助制度とはどんなものなのか。
食事補助は企業の判断で導入する「法定外福利厚生」に分類される。導入が義務付けられている健康保険や介護保険などの「法定福利厚生」とは異なる。企業の補助額は月に3500円以内で従業員が同額以上を負担する場合は非課税対象となるメリットがある。
だが、合計すると1カ月7千円。20日分使った場合は1日当たり350円で、1食当たりとしてはかなり低い金額となる。食事補助の非課税枠が昭和59年以降、据え置かれているため、物価の上昇や消費税の導入後の、現在の物価にそぐわない状況になっている。
産経新聞「在宅勤務にも食事補助 コロナで変わる企業の福利厚生」https://www.sankei.com/life/news/200813/lif2008130006-n2.html
忘れてはならないのが、「福利厚生費」として支給することです。前述の条件を満たすと、企業側は福利厚生費を損金算入することで経費計上が可能となり、従業員は給与とは別の福利厚生費として非課税で食事補助を利用できます。条件を満たさずに給与扱いになると課税対象となり従業員の所得税負担が増えるため、従業員が不満を感じる結果になってしまうでしょう。
Edenred Japan「食事補助(食事手当)で所得税が増える?食事代を非課税にする2つの条件を解説」https://workers.ticketrestaurant.jp/meal-support/meal-support20201221/
おわりに
チケットレストランは、紙タイプの食事券の他にも、電子カード決済タイプ、チケットレストラン専用アプリで支払うことが出来るようになったので、便利さが増してきました。
チケットレストランは、ランチ代の他にも仕事帰りに甘いデザートが食べたければ、加盟店のケーキ屋さんに寄ってチケットで購入できるので、食堂と違い何時でも何処でも使用できるのがメリットです。
【参考サイト】